まいどっ!戸田理平商店の若旦那(見習い)です。
前回の海苔の貿易シリーズ1~輸入・輸出ってどれくらい?輸入元は?~に続き、海苔の貿易シリーズです。
今回は海苔の輸出について焦点を当てたいと思います。
尚、当店は海外への販売は行っておらず、日本限定、つまり日本でしか買えません!
◆海苔の輸出入推移(全世界)
↑図1. 海苔の輸出入推移グラフ(1996~2014年)
まずは前回最初にも示した輸出入推移グラフですが、輸出推移はどうなっているか見てみましょう。
1996~2004年:減少傾向
2004~2008年:増加傾向
2008~2012年:減少傾向
2013~2014年:増加傾向
バブル崩壊後の失われた10年・20年と言われる経済低迷の影響か、全体としては緩やかな減少をしているようです。
2004~2008年頃は増加傾向でしたが、もしかしたらこの時期に世界的な日本食ブーム(和食ブーム)が活発になっていたのかもしれません。
そしてリーマンショックのあった2008年からはまた減少傾向となってしまっておりますが、近年は少し持ち直しつつあるようです。世界的な日本食ブームとは言われますが、日本の海苔輸出が年々増加しているわけではないようです。
では次に国別の輸出実績を見てみます。
◆海苔の国別輸出実績ランキングとパレート図
上図(図表2とします)は2013~2014年の、国別輸出金額ランキング表とパレート図(輸出金額の大きい順で並び替え、構成比を積み上げたグラフ)です。
「海苔養殖全国一位の県はどこでシェア何%?都道府県別海苔生産枚数比率をまとめてみた」
の記事のときと同様、ここでもABC分析という手法を用いました。
※厳密に言えばABC分析ではないかもしれませんが、御容赦下さい
国別で見ると圧倒的にアメリカへの輸出が多いことが分かります。
※アメリカ合衆国だけで年間約220万円、全体の22%弱(2割強)を占める
日米関係、そしてアメリカで日本食が評価されているが故の結果と考えられます。
そして
アメリカ、台湾、イタリア、香港、ニュージーランド、オランダ、スイスの7ヶ国(ランクA)で全体の70%近くを占めるため、これらの国は海苔輸出が盛んだと言えそうです。
アジアでは台湾や香港(中国とは分けているようです)、ヨーロッパではイタリア・オランダ・スイス、そしてオセアニアではニュージーランドという結果ですが、どのように感じられましたか?
個人的には日本食ブームが盛んな印象のあったフランス・イギリスが思ったほど上位ではなかったことと、ニュージーランドが上位でオーストラリアが下位なことに違和感を感じました。
また、「海苔は英語で?海外に住む知人に実際どうかを聞いてみました!」の記事にもあるように、スイス在住の同級生が「スイスでも寿司好きな人は多い」と言っていたことがデータでも表れたように感じます。
では次に、
全体の90%近くを占めるランクA・ランクBの上位15ヶ国の推移を見てみます。
◆海苔の国別輸出推移
↑図3. 海苔の国別輸出推移グラフ(1996~2014年)
上図は国別の輸出金額と輸出重量の推移を表した折れ線グラフです。
15ヶ国もあると見辛いので、幾つかに分解します。
↑図4. 海苔の国別輸出推移グラフ(1996年にトップ)
まず、1996年時点のトップ4だったアメリカ・台湾・香港・シンガポールです。
これらは途中で一時的な盛り上がりが散発的にありますが、全体としては減少傾向のようです。
2007年アメリカは輸出重量(下)では跳ね上がってますが輸出金額(上)ではそれほど上がってなかったため、叩き売りでもあったのでしょうか…?
↑図5. 海苔の国別輸出推移グラフ(2014年に比較的上位)
2014年に比較的上位だったイタリア・オランダ・スイス・ニュージーランド・フランス・中国の推移です。
大まかに言えば増加傾向のある国々と言えそうですが、オランダとフランスは近年かなり減っているようです。
中国(中間人民共和国)は2005年から数年突発的に増えています。これは2005年に海苔の輸入が開始し、一時的に輸出入が盛んになったのかもしれません。
↑図6. 海苔の国別輸出推移グラフ(残り)
残りのUAE(アラブ首長国連邦)・カナダ・タイ・ドイツ・メキシコは全てランクBです。
どちらかと言えばタイ・カナダは減少傾向、UAEとメキシコは増加傾向、ドイツは比較的安定した結果と言えそうです。
タイは1996年では輸出が盛ん(5位)でしたが激減し、2005~2010年に復活したかと思いきやまた減少と、波が激しいようです。
2013~2014年のランクA・B 15ヶ国の推移は以上です。
次に仕上げとして、1996~2014年のランキング表・パレート図と2013~2014年を比較することで、過去と近年に違いがどの程度あるかを見てみます。
↑図表7. 国別海苔輸出金額ランキング表とパレート図(1996~2014年)
こう見ると、上位の国に大きな違いはなさそうです。
つまり、20年近く前の時点で海苔輸出が盛んな国は近年も盛んな傾向にあると言えそうです。
但し、オーストラリア・イギリス(英国)の2ヶ国だけは違いました。
1996~2014年実績ではランクBでしたが、2013~2014年でランクCにダウンしています。
これら2国の推移を下図に示します。
↑図8. 海苔の国別輸出推移グラフ(豪・英)
両国とも日本食ブームはあると思うのですが、2000年頃から見事に減少してしまっています。
これは、この2ヶ国に限ったことではありませんが、もしかしたら韓国・中国の安価な海苔が市場で選ばれているためかもしれません。
かつてないボリュームになってしまったのでこれ以上の考察は控えます。
ということで、今回は海苔の輸出について、盛んな国と、その推移を見てみました。
「こんな観点で調べるとどう?」
「この増減の理由はきっとコレだよ」
といった御意見や御感想がありましたら、どしどしお寄せ下さい!
ではでは、今後ともごひいきにっ!
【参考情報】
・財務省/貿易統計
http://www.customs.go.jp/toukei/info/index.htm
調べた品目(統計品目コード、HSコード)についてはこちら
・ABC分析とは?ExcelやQlikViewでの実現方法は?