toggle
2015-04-30

海苔の仕入れの難しさ…毎年一年生ってどういうこと?

00000037_eye_catch__thumb

何年か経験してますが、いまだに進級できません…。

まいど!戸田理平商店の若旦那(見習い)です。

先日「海苔屋のスタート地点はどこから?基本的な焼海苔加工の流れについて」で加工業務の流れをお伝えしました。
今回はその内の「(1) 仕入れ(入札)」について焦点を当ててみたいと思います。
※以降、当店が仕入れ(入札)をしている愛知県の海苔業界について、若旦那が独自に調べ、自分なりにまとめた結果を記します。
地域差や例外もあり、これが全てではありませんので御留意願います。

%e7%84%bc%e6%b5%b7%e8%8b%94%e5%8a%a0%e5%b7%a5%e3%83%95%e3%83%ad%e3%83%bc_1

まず、海苔の流通の全体イメージ図から、海苔の入札(共販とも呼ばれます)について図解します。

%e6%b5%b7%e8%8b%94%e6%b5%81%e9%80%9a%e3%82%a4%e3%83%a1%e3%83%bc%e3%82%b81

※分かり易さのためにかなり簡略化しています

海苔は生産者(海苔漁師)から漁協(組合)を経て、等級検査(格付け)がなされ、それぞれの等級毎に箱詰めされたものが愛知県漁連海苔流通センター(半田市にあり、入札会場でもある)に集まります。
各組合で生産者達の海苔を等級毎にまとめるため、各等級は単一の生産者による海苔とは限らず、同じ等級と言えど海苔の個体差(バラつき)があります。

%e7%ad%89%e7%b4%9a%e6%a4%9c%e6%9f%bb%e3%82%a4%e3%83%a1%e3%83%bc%e3%82%b8

A漁協の1等という等級にはAさん・Bさん両方の海苔が混在

集まった大量の箱の内、各漁協の各等級毎にサンプルの1箱が海苔流通センターの見付場(下見をする場所)に並べられます。
我々はその氷山の一角から海苔の品定め(下見)をし、自社に合う(であろう)海苔を探します(どれを幾らで、どのくらい仕入れたいかの作戦も立てます)。

1%e5%85%a5%e6%9c%ad-1

見付場イメージ(数百箱のサンプルが並びますが、それでも氷山の一角です)

1%e4%bb%95%e5%85%a5%e3%82%8c%e7%9b%b4%e5%be%8c-1

箱にある海苔は既に乾海苔が帯で結束された状態で、これを見て品定めをします

そして入札では、漁連スタッフの進行のもと、各漁協の各等級毎の海苔が入札に掛けられ、(端末入力にて)最も高値を付けた海苔屋のみ落札できます。当たり前ですが、1円でも低い値を付けるとその海苔は1枚も購入できません。

このようにして、入札権を持つ指定業者(海苔屋)は海苔を仕入れます。
愛知県では約20の漁協(組合)の海苔を一同に集めて入札を行います(どのような組合があるかはまた別の機会に…)。
入札は11~4月の1シーズンで10回程度(月2回程度の頻度)行い、毎回数千万枚の海苔が入札に掛けられます。

尚、先シーズンの初回入札では愛知県知事が参加され、愛知県農林水産部水産課のホームページにも載っております。
こちらでも入札の様子が写真に収められており、イメージしやすいと思いますので御覧下さい(若旦那もこっそり写真に写ってます)。
http://www.pref.aichi.jp/0000066958.html

というわけで、
今回は海苔の入札について、少し掘り下げて説明してみました。
因みに、入札権を持ってない地域の海苔等は、海苔問屋(海苔の卸業もやっている海苔屋も多い)から原料を仕入れることもあります。

入札の恐ろしいところは、見付場で下見(品定め)をする海苔が全てではないということです。
見付場でたまたま手に取ったサンプルの海苔が良くても、それ以外の箱に詰められた海苔が同じく良いとは限りませんし、その逆も然りです。

正直、「これは違う等級じゃないのか…」と思うようなものが同一等級で入札に掛けられていることもあり、最近も涙を飲んだばかりです。

前社長である父も生前、入札について「毎年一年生だ」と言っていました。
入札の難しさ、そして、海苔の生産についても毎回同じ品質のものが採れるわけではないことを言っていたのだと思います。

個人的にはまず、サンプルにある海苔の品質(及び価格相場)を、早く・正しく見極める能力を身に付けられるよう精進する所存です。

【参考情報】 海苔の等級について

各組合で海苔の等級検査(格付け)がされますが、入札時にどのように表記されているかを紹介します。

表1. 愛知県の入札で使用される主な等級とその要素

等級(略記) 意味
優、1、2、… 優等、一等、二等、…(等級が下がるほど低品質)
補助等級(略記) 意味
軽、重、重重 重さによる分類(組合によって基準が異なる)
○(穴)、大○ 穴開き有り(大○の方が大きい穴開き)
チ(縮) 小さなチヂレ(縮れ)が発生
ヤ(破) 小さなヤブレ(破れ)が発生
ク、B 色にクモリ有り
同じ網で複数回摘んだために凸凹有り
A 赤みがある
C 微量の珪藻が混入
エビ (非常に小さい)エビ混入
初摘み
浮流し漁法による収穫
冷凍網による収穫
規格外(主に重量制限のないもの)

※地域差があります。「特」「黒」など、ここにない要素を使用している地域もあります。また、青海苔関連の等級もありますが、ここには載せていません。

単純に「優」等という等級もあれば、
「浮初冷Bク大○重重優」等という様々な属性を持つ等級もあります(ここまで多いのはなかなかないですが笑)。

各海苔屋は「この浜(組合)でこの時期に採れたこの等級で、サンプルがこれであれば幾らくらいだろう」と、入札の見付場で品定めをします。

初めて入札に参加したとき、海苔達とだけでなく、この謎の記号達とも睨めっこしていたのが懐かしいです。

ではでは、今後ともごひいきにっ!


関連記事