海苔とは
紅藻・緑藻・シアノバクテリア(藍藻)などを含む、食用とする海藻のことです。
日本では、古く「紫菜」・「神仙菜」でありましたが、食品として、それら藻類を加工した「生海苔」や「板海苔」などが食されており、江戸前寿司などで重要な材料ともなっています。
日本語の「ノリ」はぬるぬるするという意味の「ヌラ」を語源にしていて、水中の岩石にコケのように着生する藻類全般を表す語でもあります。
平安末期は、「天海苔」といい、アマノリを使用した板海苔とした「浅草海苔」によって広く広がりました。
海苔は、たんぱく質、食物繊維、ビタミン、カルシウム、EPA、タウリン、ベーターカロチン、アミノ酸などが豊富に含まれていて、栄養に富んでいます。
日本の他に、主に、中国や韓国で養殖されています。海苔の大消費地である日本は、輸入枠を割り当て制にしていて、従来は、韓国にのみに輸入枠が割り当てられていました。
しかし、2003年に中国から輸入枠の割り当て申請がありました。自国の輸入枠減少を恐れた韓国は、日本の海苔市場の自由化を要求しました。
日本は、韓国への海苔輸入割当を大幅に増やすことで妥協を図り、2006年から2015年までに韓国からの海苔の輸入枠は順次増えていき、2004年の5倍、市場占有率にして7倍まで拡大されることになりました。
しかし、世界的な寿司ブームや国内需要の増勢で、対日輸出実績は割当枠を下回る状態になっています。
中国では1990年頃から養殖が始まり、紅蘇省や山東省が主な産地となっています。
味付海苔、スナック菓子、コンビニエンスストアのおにぎり等に利用されていて、海苔の生産量、消費量ともに増加しています。
しかし、輸入枠の割当は行われているものの、値段や品質などの問題もあり、日本へはほとんど輸出されていません。
一方で、「スシ」などの日本食ブームの影響もあり、日本以外の世界各国へ輸出されています。
海苔の歴史
海苔については、古くは奈良時代初期に編纂された「常陸国風土記」に登場していて、ヤマトタケルに関して次のような記述が見られます。
「古老の曰(い)へらく、倭武の天皇(やまとたけるのすめらみこと)海辺に巡り幸(いでま)して乗浜(のりのはま)に行き至りましき。時に浜浦(はま)の上に多(さは)に海苔(のり)を乾かせりき。」
同じく、「出雲国風土記」においても、「紫菜(むらさきのり)は、楯縫(たてぬひ)の郡(こほり)、尤(もと)も優(まさ)れり」という記述があります。
楯縫郡は、現在の島根県出雲市の内で、平成17年合併前の平田市にほぼ相当し、そこには海苔を特産品とする十六島海岸があります。
701年2月6日に施行された大宝律令では、朝廷への調(税金)として約30種類の海藻類が挙げられており、その中でも海苔は高級品でした。
これにより、2月6日を『海苔の日』とされているのです!
710年に遷都した平城京には、海藻類を売る「にぎめだな」(和布店)、海苔や昆布を佃煮のように加工したものを売る「もはだな」(藻葉店)という市場も ありました。しかし、海苔が市場で売られていたとはいえ、やはり庶民には高嶺の花で上流階級である貴族のごちそうだったようです。
また987年頃に書かれた「うつほ物語」には、甘海苔や紫海苔といった具体的な名称で海苔が登場しています。
鎌倉時代に入ると、食文化は大きく変わり、これまでの朝廷や公家や貴族たちが贅を極めた食生活は改められ、質素倹約を旨とした精進料理を完成していきます。
日本の伝統食材をふんだんに取り入れた精進料理でも、海苔は珍重されます。
海苔は、古くは天然のものを採るだけでしたが、江戸時代になると養殖技術が確立し、東京湾で採れた海苔(紫菜)を浅草和紙の製紙技術を用いて紙状に加工するようになって「浅草海苔」となり、現在市販されている板海苔が完成しました。
江戸時代中期になると、簀で抄く四角い板海苔が登場します。さまざまな具を芯にしてごはんを巻く海苔巻きが庶民の間で大流行し、屋台ずしと呼ばれる店も登場します。
江戸っ子たちは、現在のファーストフード的感覚で海苔巻きを食べていたようです。
海苔養殖は江戸時代から始まったものの、海苔の生活史が分からなかったため、タネ付け作業はカンや経験だけを頼りにおこなわれてきました。そのため生産高は不安定で、長い間海苔は相場商品として「運草」と呼ばれていたのです。
しかし昭和24年、イギリスのドリュー女史が海苔の糸状を発見し、それまで不明だった海苔のライフサイクルが解明され、人口採苗の実用化へとつながりました。
人口採苗技術の普及は、それまでの天然採苗の不確実さをなくし、また天然タネ場が近くになかったため海苔養殖ができなかった地区も産地の仲間入りができるようになりました。
海苔の産地
1年間で約80~100億枚の海苔が、全国各地で生産されます。生産を大別すると、宮城、千葉、神奈川、愛知、三重などの「東日本ブロック」、兵庫、岡山、広島、山口、香川、徳島、愛媛などの「瀬戸内ブロック」、福岡、佐賀、熊本、大分、長崎、鹿児島の「九州ブロック」の3つに分けられます。
当店が主に仕入れる海苔は、地元の愛知と有明産のものです。
☆東日本ブロック
・愛知
愛知の海苔養殖の歴史は古く、江戸末期に東三河地区で始まり、現在は、三河湾と渥美半島、知多半島で海苔の生産が行われています(昭和40年代に渥美半島奥部が埋め立てられてしまったため、東三河湾地区は残念ながら減少傾向にあります)。
西三河産は味の評価が高く贈答用に好まれ、知多産は色の黒さで定評があり、主にすし屋向けとして人気があります。
☆九州ブロック
・有明海
国内最多の生産量を誇る有明海漁場は、全国の生産量のうち50%以上を占めています。
主な産地は佐賀・福岡・熊本ですが、熊本以外は昭和30年前後に本格的な養殖が始まった全国的に最も新しい産地です。
佐賀、福岡の有明海漁場の初摘みは、味の良さと柔らかさが高く評価されています。
特に佐賀は生産量も品質も日本一という地位を確立しています。
海苔の基本サイズ
海苔1枚(全型)のサイズは、原則として、タテ21cm×ヨコ19cmです。昭和40年代に、このサイズに全国統一されました。
当店では、食べやすい大きさにあらかじめカットしたサイズも御用意しております。
・焼海苔半切タイプ
すし用や三角おむすび用に最適。
・焼海苔8切タイプ(5cm×10cm程度)
「おむすびのり」、「おかずのり」などのネーミングで呼ばれたりします。
・味付海苔8切タイプ(5cm×10cm程度)
「おむすびのり」、「おかずのり」などのネーミングで呼ばれたりします。当店では1袋8切5枚入りで24袋のもの(高級感溢れる和紙包装)を販売しております。
・味付海苔12切タイプ(3cm×10cm程度)
一般には12切タイプが多いようです。当店では1袋12切5枚入りで50袋のものと100袋のものを販売しております。
・もみのり、きざみのり
丼物やそばなどのトッピングに重宝します。
また、海苔には表と裏があることを御存知ですか?
表は、ツルツルして光沢があり、裏はザラザラしています。おにぎりや手巻きずしを作るときは、海苔の裏面をごはんの面に合わせるとキレイにでき上がります。
海苔の単位
海苔は、10枚が1単位です。10枚を束ねた海苔は「1帖(じょう)」という単位で表します。海苔の単位は「1帖=10枚」と覚えて下さい。
海苔の旬
1年中、市場に出回っている海苔ですが、海苔は海の天産物です。魚に旬があるように、海苔にも旬があります。
海苔は、11~12月頃から摘み取りが始まり、4月頃まで続きます。11~12月頃と1~2月頃、各地で一番最初に摘み取られた海苔は「新海苔」と呼ばれ、やわらかく、香り高い風味が特徴です。
是非、御賞味下さい!
海苔の栄養
栄養1 海苔のビタミンCで美肌作り!
焼海苔約1帖には、みかん1個に含まれる1.5倍の量のビタミンCが含まれています。
ビタミンCには、メラニンの生成を抑えてシミを防ぐ効果と、できてしまったシミを薄くするダブルの美白効果があります。
また、たばこを吸う方は、ニコチンがビタミンCを破壊してしまうため、毎日たっぷり補給したいものです。
一般に、ビタミンCは熱に弱いため調理をすると栄養素が破壊されてしまいますが、海苔に含まれているビタミンCは熱に強く、焼いても栄養素が壊れないのが特徴です。
栄養2 海苔の食物繊維でお腹スッキリ!
海苔の約3分の1は、食物繊維です。なんと、ほうれん草の約2倍近くも含まれています。
食物繊維といえば、多くの女性にとっては宿敵の便秘に効果的です。
このほか、血中コレステロール値を低下させ、発がん物質などを体外に排出する働きもあるため、動脈硬化症や糖尿病、大腸ガンなどの生活習慣病予防にもいいと言われています。
食物繊維は野菜に多く含まれますが、海苔の食物繊維は野菜の食物繊維と違い柔軟で、胃壁や腸壁を傷つけることなく穏やかな整腸作用を行います。
またこの種の食物繊維は、細菌による腸内でのビタミン合成にも役立っているとも言われています。さらに、腸内の有害なアミンや有害金属の除去にも有効です。
栄養3 海苔2枚のビタミンAは子供の一日必要量に匹敵します!
海苔には、12種類ものビタミンが含まれています。
育ち盛りの子供たちが1日に必要とするビタミンAの量は約500ugですが、海苔2枚で同じ量を摂ることができます。
緑黄色野菜が嫌いなお子様には、野菜の代わりに海苔でビタミンAを補給してみてはいかがでしょう?
栄養4 海苔のビタミンB1、B2で疲労回復!
海苔約3枚には、豚肉肩ロース(薄切り肉約1枚分/30g)にあたるビタミンB1、B2が含まれています。
この量は、成人女性が1日に必要なビタミンB1、B2の必要量に相当します。
ビタミンB1、B2は、糖質を効率よくエネルギーに変えてくれるので、食欲がないときや疲れやすいときに摂ると、疲労回復に役立ちます。ごはんも糖質ですから、おにぎりに海苔を巻いて食べるのは、日本人の知恵といえるでしょう。
栄養5 海苔の鉄分で貧血予防!
貧血予防、、、というと鉄分。鉄分というと、レバーやほうれん草を連想しがちですが、海苔約5枚で、なんと牛レバー1切れ分(約40g)、ゆでたほうれん草1わ分、牛乳(1本200cc)なら約8本、卵なら1.7個分にあたる量の鉄分が含まれています。
貧血予防に大活躍です。レバーが苦手な方は、海苔で鉄分補給をしましょう。
栄養6 海苔のカルシウムでイライラ解消!
海苔には、現代人に不足しがちなカルシウムやヨードなどのミネラルが豊富に含まれています。
海苔2枚で、牛乳約15cc、卵1/2個分と同量のカルシウムが含まれています。
カルシウムは骨を丈夫にするだけでなく、骨粗鬆症の予防やイライラを解消するとも言われています。
育ち盛りのお子さんや妊娠中の方は、海苔をたっぷり食べて骨を丈夫にしましょう。
栄養7 今、注目のEPAが豊富!
海苔には、ガン予防に効果的と注目されているβ-カロチンやコレステロール値を下げる働きがあるEPA(エイコサペンタエン酸)が豊富に含まれています。
中でもEPAは、イワシやサンマなどの青魚に多く含まれる油脂で、今注目されている栄養素のひとつです。
この他、悪玉コレステロールを減らしたり、肥満の原因である中性脂肪を減少させる効果もあると言われているので、生活習慣病予防に効果的です。
栄養8 海苔のタウリンで生活習慣病予防!
海苔はビタミンだけでなく、タウリンも豊富に含まれています。
タウリンは、悪玉コレステロールを減らしたり、高血圧に関連した動脈硬化、血管障害、脳血栓などの脳疾患、心筋梗塞、心不全に効果があると言われています。
その他、二日酔い、慢性肺炎、白内障、糖尿病にも効果があると言われています。
栄養9 海苔のタンパク質はお酒の友!
お酒を飲むと、肝臓でアルコール分解作業を行うことは御存知でしょうか?
肝臓はこの作業を行うとき、タンパク質を消費するため、お酒を飲むときはタンパク質を補う食べ物をとることが大切です。
海苔には、タンパク質が豊富に含まれています。タンパク質が豊富な食品としては大豆が挙げられますが、海苔2枚で、ゆでた大豆約15gに相当します。
また、タンパク質だけでなく、強肝作用のあるタウリンも多く含まれていますから、海苔を使ったおつまみをお酒の肴にすることにより、タンパク質が補え、肝臓の働きも高まることになります。
栄養10 海苔のアミノ酸は「日本の味」!
海苔には、日本伝統的な味である、グルタミン酸(主に昆布に含まれるうまみ成分)、イノシン酸(主にかつお節に含まれるうまみ成分)、グァニル酸(主にしいたけのだし汁に含まれるうまみ成分)を含んでいます。
これらの味をすべて含んでいる天然食品は、海苔以外にないと言われています。
海苔は、海と太陽の恵みが生んだ「日本の味」。だから、ごはんに海苔を巻いただけでこんなに美味しいんですね。